大学1年生の時から2年半ほど家庭教師のアルバイトをしていました。
家庭教師のアルバイトを選んだ理由は、時給が高く、長時間働かなくてもよさそうだからという安直なものでした。3歳下の弟がいるため、アルバイトを始める以前にも勉強を教えることはよくあったのですが、仕事として勉強を教えるとなると、責任を感じて、生徒のやる気が伴わないのに自分だけ空回りしてしまうこともありました。
アルバイトを始めて半年ほどたったころ、ある中3(当時)の女の子を担当することになりました。その子は中高一貫校に通っているため高校受験がないので勉強する気が全くなく、中でも英語が大の苦手でした。授業についていけるようにするため英語を教えてほしいと頼まれたのですが、最初はすぐ話をそらそうとするなど英語が本当に嫌いなようでした。
私は大学で語学を専攻し、海外旅行が好きなので、英語でコミュニケーションが取れて嬉しかったエピソード、そして、海外に行ったとき日本では決してできないような素晴らしい体験ができたことをそれとなく話に織り交ぜていきました。すると、授業で分からなかったところを積極的に質問したり、宿題で取り組みたいところを自ら言ってくるようになり、だんだんと英語の成績は上がっていきましたが、それでも全教科の中ではダントツに悪く、私は正直もどかしさを感じていたとともに、親御さんからクレームをつけられるのではないかと内心ひやひやしていました。
そんなあるとき、担当し始めてから1年がたったころ、本人から直接、家庭教師を1か月間お休みしたいと言われました。英語ができないままなので私の授業がついに嫌になったのではないかと思い、怖かったのですが、理由を聞いてみました。
すると、「フィリピンに1か月間語学留学に行くから…」と恥ずかしそうに答えてくれました。1年前の英語が大嫌いだった頃からは想像もつかないような答えに私はとてもびっくりしました。
そして、何より自分から、初めての海外であるにもかかわらず留学を決心してくれたことが嬉しくてたまりませんでした。留学から帰ると、留学中に休んだ授業の分はすべて振替え、さらに熱心に取り組むようになりました。勇気を出して留学に行ったことで、こんな新しい発見があった、もっと英語を勉強しようと思った、など体験したことを嬉しそうに話してくれました。
私は、家庭教師のアルバイトをやっていて本当に良かった、これからも続けたい、と思いました。