これは私が大学の時に経験した珍しいバイト話です。
スーパーのレジ打ちや家庭教師など一通りのバイトは経験してきました。
正直な感想はどれも面白くなくすぐに飽きてします。
どうせなら何か面白そうなバイトは無いかと求人誌をぼーっと見ていたら有りました。
雇い主は某大学の水産学科。
大学で行っている研究のために砂浜に打ち上げられる魚の死骸を拾い集めるバイトです。
朝早く起きるのは苦手ではありませんし砂浜で魚の死骸を拾うバイトなんて聞いたこともない。
面白そうなので早速連絡して雇ってもらいました。
早朝、日の出とともに3カ月間砂浜に通いました。
魚の名前なんて何も知らない私。
アジとサバの区別もつかないほど知識がありません。
とりあえず長い砂浜を永遠と2時間ほど歩きまわって死骸を集めます。
中には腐敗した死骸もあり臭いに慣れるまで苦労しました。
また、砂浜は非常に歩きにくく物凄く体力を消耗します。
潮風で髪の毛もベトベトになり楽なバイトでは有りませんでした。
しかし、ルーチンワークのような仕事ではなく毎日が新しい発見で楽しいバイトでした。
魚の名前が判るようになってくるとさらに楽しさが倍増します。
中には珍しい深海魚の仲間や死滅回遊魚と呼ばれる美しい熱帯魚の死骸も発見されました。
珍しい魚を見つけた場合は特別ボーナスが支払われます。
ハダカイワシと言う深海魚を初めて見つけた時の喜びは今でも覚えています。
大学の研究室の生徒達と一緒に珍しい魚が見つかった時は大喜びしました。
今思えば早朝から砂浜を歩きまわってリアルポケモン探しをやっていたんです。
いつの間にかある程度魚は同定出来る知識を身につける事が出来ました。
そんなバイトも慣れてきた3カ月目で終了する事となりました。
しかし、このバイトには続きがありました。
拾い集めた魚の一部は冷凍保存しておき透明標本という標本に仕上げるのです。
希望者はこの透明標本作りのバイトにも参加できると言う事でちょうど夏休みのシーズンだったので参加する事にしました。
大学の研究室の中が作業場なのですが、まず入った感想は臭い。
独特の薬品の香りが立ち込めています。
服にも薬品の匂いが付くので慣れるまで少し抵抗がありました。
標本作りの作業に関してですが文系の私は薬品の知識などありません。
大学の生徒が丁寧に指導してくれましたので事故が無いようしっかり学びました。
慣れてくれば流れ作業です。
危ない薬品も使用するため気を付ける事は沢山ありますが作業自体は難しいものではありませんでした。
私の経験した透明標本は標本と言うより芸術品。
美しく不思議な世界に感動しました。
魚の死骸集めから標本作りの手伝いまで約4カ月のバイトでした。
今まで様々なバイトをしてきましたがこのバイトだけは今でも鮮明に思い出す事が出来ます。
珍しいバイトをあえてチョイスするのも面白い経験が出来て思い出作りには良いと思います。